『雅翁自伝』

《目次》

一 幼少年時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 生い立ち/父が開拓団で満洲へ/母子家庭/父の遺言状/村葬/空襲

 /終戦/俳句少年父子/野球少年/憂国の志士/中学時代まで

二 青少年時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 灰色高校受験時代の一途さ/都会を目指さず/自由気まま/

 森戸学長の式辞「本末軽重」/ネール首相の微笑「平和希求」/

 文学作品多読/希望は高く暮らしは低く

三 教員時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新任は連翹の島へ/生徒に寄り添う/無償の愛/主な勤務先十年単位で三回転勤/組 曲作詞/創作表現活動/同人誌『無帽』所属/香川菊池寛賞/父への挽歌『鍬の戦士』/連句を広める

四 自適時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

万葉集』講読・全歌色紙化/高齢者向古典講座/「宗鑑と芭蕉」/郷土の戦禍/郷土文学の紹介/戦没詩人森川義信/オリジナル自作紙碑     

五 総括時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

回想の中の閑雅/清貧に甘んず/令和と共に

 

  あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  幼少時代

 燧灘に面するのどかな農村に生まれた。二人の姉の後に生まれた男の子で、優しさに包まれて育てられた。周囲の農家に比べて貧しかったが、心豊かな雅を好む家風であった。

十二年八月二十八日生まれ。七月七日盧溝橋事件を契機としての日中戦争の始まった時期であった。父母は共働きの小学校の教員であったので、子守さんの世話になった。近所近い、竹馬の友がよく遊びに来てくれた。我が家は比較的庭が広く、傍にせせらぎの小川も流れていて、男の子の遊ぶのには好都合だった。ドジョウ・フナをじょうれんで毎日のように捕ったものだ。

 父が満洲に行くのを見送った高松桟橋の風景が、父にまつわる最初で最後の思い出である。父は満蒙開拓青少年義勇軍の中隊長として渡満。⋯