彼岸(10首歌)

毎年よ彼岸の入りに寒いのは 子規の句にある通りに寒い

コロナ禍も子規寺詣で野に摘みし菜の花少し添え花として

彼岸僧咳けば信徒気遣えるこの時世は神経過敏

母の齢遥かに越えてお彼岸を幾度迎えし戦争遺児か

彼岸会に詣でる戦争未亡人 戦後七十七年稀少となりぬ

正信偈  彼岸供養のMaineとてマスクを洩れる声高らかに

彼岸餅には蓬餅 日当たりのよき土手から摘みて来し

沖遥か御光となり 彼岸潮 音なく寄せる しじまもゆかし

彼岸西風 涅槃西風 たらちねの母の戒名「涅槃」が入る

彼岸桜 散り際にようやく参りたり 軍人墓地の父のみ墓に