忘れられないアンデルセン

「さて、皆さん⋯その人の名はハンスクリスチャンアンデルセンであります」

今から七十年ほど前、中学校の弁論大会で好評を得た私の弁論最後の結びでした。今もその時の興奮を忘れてはいない。なぜにそれほどアンデルセンが腕白坊主たちの心を動かしたか、知らない。それを今しきりに思い起こそうとしている。『絵のない絵本』『即興詩人』の作品紹介でそんなに中学生を感動させることはできなかった思う。

「私は誰でしょう?」という問いかけ形式がフレッシュであったのか?初めからアンデルセンの話をします、などと言わなかったそれだけのことだったのか?形式的なそれだけであったとは思わない。