144 梅が香に追ひもどさるる寒さかな 四温くずれてものの芽躊躇
145 梅が香にのつと日の出る山路哉 處々に雉子の啼たつ(野坡)
146 梅が香に昔の一字あはれなり 花橘のいざなふ思ひ出
147 梅が香やしらら落窪京太郎 読み耽る姫物語熱
148 梅が香や見ぬ世の人に御意を得る ぴくりと動く清盛の眉
149 梅恋ひて卯の花拝む涙かな 遷化和尚の余徳春風
150 梅白し昨日や鶴を盗まれし 和靖の飄逸秋風の隠逸
151 梅つばき早咲き褒めん保美の里 院の帝のゆかり嬉しく
152 梅の木に猶宿り木や梅の花 伊勢俳壇の父子の祝ひ
153 梅稀に一もとゆかし子良の舘 伊勢神宮に見当たらぬ梅
154 梅柳さぞ若衆かな女かな 艶冶な気分天和の歌舞伎
155 梅若菜丸子の宿のとろろ汁 かさあたらしき春の曙(乙州)
( )がない句は小生(雅舟)による。