小川未明「からす」

からすが 頭にとまつた かんざしのやうに止まつた

止まつた烏 なぜなぜ なかぬ いつまで鳴かぬ

風ふき烏 飛んでどこへゆく 海は暴れてゐるぞ

なんで鳴く かあ かあ 山も暴れてゐるぞ

あんなに高く あんなに低く 後になり 先になり

みんなからきらはれて 鳴き 鳴き とんでゆく

黒い衣を着かへて 来い

金の帯をしめて 来い

今度の世には 王様にしてやるぞ