梅が香に追ひもどさるる寒さかな(芭蕉) 四温くずれてものの芽躊躇(雅舟)
梅が香にのつと日の出る山路かな(芭蕉) 處々に雉子啼きたつ(野波)
梅が香に昔の一字あはれなり(芭蕉) 花橘のいざなふ思ひ出(雅舟)
梅が香やしらら落窪京太郎(芭蕉) 読み耽る姫物語熱(雅舟)
梅が香や見ぬ世の人に御意を得る(芭蕉) ぴくりと動く清盛の眉(雅舟)
梅恋ひて卯の花拝む涙かな(芭蕉) 遷化和尚の余徳春風(雅舟)
梅白し昨日や鶴を盗まれし(芭蕉) 和靖の飄逸秋風の隠逸(雅舟)
梅つばき早咲き褒めん保美の里(芭蕉) 院の帝のゆかり嬉しく(雅舟)
梅の木に猶宿り木や梅の花(芭蕉) 伊勢俳壇の父子の祝ひ(雅舟)
梅稀に一もとゆかし子良の館(芭蕉) 伊勢神宮に見当たらぬ梅(雅舟)