淡海の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古思ほゆ(柿本人麿)
石ばしる垂水の上の早蕨の萌え出づる春になりにけるかも(志貴皇子)
もの思へば沢のほたるも我が身よりあくがれ出づるたまかとぞ見る(和泉式部)
ねがはくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ(西行)
明日ありと思ふ心の仇桜夜半に嵐の吹かぬものかは(親鸞上人)
しきしまのやまと心を人とはば朝日ににほふ山さくら花(本居宣長)
新しき明日の来たるを信ずといふ自分の言葉に嘘はなけれど(石川啄木)
白鳥は哀しからずや空のあを海の青にも染まず漂ふ(若山牧水)
ブーゲンビリアのブラウスを着て会いに行く花束のように抱かれてみたく(俵万智)
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや(寺山修司)