詩人森川義信ここに眠れる

香川県観音寺市粟井町 粟井神社境内に粟井戦没者【殉國碑】の中に刻銘あり。

 ~森川義信に捧げる詩《未必の孤悲》~  剣持雅澄

この山村には戦没者の【軍人墓地】がない

 殉国碑に名前が羅列されているだけ

その前に【個人墓碑】がない

 一家親族の一員として刻名あるのみ

近代文学史【近代詩史】に銘記されるはずの

 詩人森川義信はこの神社境内にひっそりと

名前だけが他の人と一緒に眠っている

 誰一人注目するものはなく眠り続けている

五月晴れの今日もこのあじさい神社に

 ほととぎすは啼いていても

義信の魂の嘶きと聞き届ける人はいない

 ここは讃岐香川県西の果て

山間僻地に近い静かな山里

 讃岐山脈が岩邊池に影を落とす

香川県ホトトギスが鳴きやまない

 詩人文学青年がビルマで殉死した

魂の声となって何かを呟いている

 わずか一冊の詩集のみあって

没後80年のこの夏 『未必の孤悲』を詠っている