新潮選書 新刊『西行と清盛』(五味文彦著)

 同じ年に生まれた両巨頭、日本一の歌聖西行、武人平氏棟梁清盛の比較論。 
西行崇徳院との交流があった。高野山での修行。23歳で出家遁世。歌僧として一生を送る。『山家心中集』についで名品『山家集』の完成。
 清盛は保元の乱平治の乱、清盛の勝利、その後の躍進、厳島信仰の深まり、平氏一門の栄華、武家政権の端緒。台頭する武士の時世界を広げていく。忠盛はともかく、清盛は歌の才能を持たなかった。福原で出家入道するも、歌は残されていない。遁世の二人という点ではその宗教心の多少はあれ、共通するものがある。和歌にかける情熱において西行に追随できるはずはない。
 本年の大河ドラマがあくまでも武人清盛が主人公だが、本書では文人西行を中軸に勧進歌僧とその合間合間に清盛の生き方を対比、添える形をとっている。それはそれなりに面白いが、整合整理にやや難点があるかもしれない。丁寧に読んでのお楽しみ。