梅原猛の高橋和巳観

    梅原猛 大正14 年(1925)3月20日平成31年(2001)1月12日 享年93歳

       高橋和巳  昭和6年(1931)8月31日~昭和46年(1971)5月3日  享年39歳

 高橋和巳の死は、一応ガンという不治の病のための死であるけれど、最近彼のまわりにいた多くの友人はいう。やはり彼の死は自ら求めた死ではないか、と。私もそう思う。彼は自己の小説に用いる百分の一の注意をも、自己の肉体に払わなかった。何百枚という密度の濃い作品を次々と書き、その間には大酒を飲み、深夜バーにいつづける彼を見ると、誰しも不安を感じたものである。

 はたして、作中人物は作家の指弾者であり、告発者であるか。そして純粋なものは、すべて滅びゆくものであろうか。私は、今の私自身の生への証しのためにも、そのいずれの命題に対しても否を言いたいが、このすぐれて論理的であると共にすぐれて倫理的であった友人は、死後私にとってますますきびしい指弾者となり、ますますきびしい対立者になるような気がする。(「文藝」高橋和巳追悼特集号)