⋯兄は明日死刑になるが悪い事をしたとは液ほども思はない。公明正大な気持で潔く散って行くが、皇国の為に死ぬ覚悟は充分出来て居る。恐れも悔みもなく皇国再建のため捨てる生命にに何の未練も執着もないが、唯皇国の前途を見ずに死ぬのが心残りである。日本の前途は棘の道であるから生活に大改革をなし万世一系の皇統天壌無窮であるといふ事を忘れずに日本の再建に邁進せよ。どんな悲しみにもどんな不幸にも堪へ忍ぶ勇気と不動の信念とをもて、そして国を愛し親を敬ひ姉妹相扶け夫婦和合し真心を篭めて夫に仕へ子供を立派に教育し私心を捨て大愛に生き幸福に暮らせよ。此の肉体は滅しても霊魂は不滅であるから兄は必ず祖国に帰り、国及び合田家を守る。兄の霊魂は永遠に生きてゐることを忘れるな。
皇神の誠の道をかしこみて思ひつつ行く思ひつつ行く 『世紀の遺書』講談社刊
これは遠くの他所事かと思っていたところ、近隣の一般墓地に同じ墓誌を見つけて
腰が抜けそうになった。その墓誌の最後の部分を抜き出しておく。
⋯終戦後戦犯として英国軍法会議に於て絞首刑の判決を受け昭和二十一年七月十一日英領チャンギ―に於て身の潔白を叫び祖国の繁栄と家族の多幸を祈りつつ従容として死に就く嗚呼何ぞ其の死の壮なる 時年三十六歳 〔観音寺市内一般墓地〕