永井隆著『この子を残して』から【十至言】

苦しくても、さみしくても、悲しくても、その苦しさ、さみしさ、悲しさをごまかさず、そのまま真実に生きさせよ。(「真実」)

イエズスは山上の垂訓でこう言った。「さいわいなるかな泣く人、彼らは慰めらるべければなり」ーー泣け!わが子。(「完全な幸福」)

神と愛によって直結している人の子は、いつでも神に向かって取りすがり、心ゆくまで泣くことができる。(「泣く人」)

社会ではどんな実業でも、独りぼっちでは成功できるものではなく、必ず多くの友人と連絡、協力を保ってゆかねばならない。(「はと仲間」)

心のやさしい女性であれば、たとえ継母であっても、真の母と同じ情愛をそそいでくれるであろう。(「遺産」)

「へりくだり!」このおじいさんの一生を貫いたものはこの精神だった。出しゃばるな、偉ぶるな、名を売るな、人気者になるな、世間を気にするな、いつも隠れて善いことをせよ!(「へりくだり」)

人生の真の目的は「神を知り、神を愛し、神に仕えて、ついに天国の幸福を得る」ことである。(「人生の目的」)

宗教も科学も目標は同じ真理なのだ。二つは一つの方向を指している。まことの科学者は必ず正しい宗教を持っているはずである。(「科学者と宗教」)

故里遠く、旅に病む身にとって、この浦上の里人が皆己の如くに私を愛してくださるのがありがたく、この家の名を如己堂と名づけ、絶えず感謝の祈りをささげている。(「如己堂」)

知恵が勝ち、腕力が正当な地位まで後退する時がきている。人間が人間らしい生活のできるいい時代だ。誠一たちはその時代に生きる。うらやましいね。(「気合い」)