木山捷平作『大陸の細道』

庶民生活の中の「小さくて大きな真実」 “日本の親爺”木山捷平が、暖かく、飄逸味溢れる絶妙の語りくちで、満州での体験を私小説世界に結晶させた。芸術選奨受賞作。ソ連軍侵攻ちょくぜんの満洲をシニカルに描いた長編小説。

内地にいるよりも自由がきく日々を望んで満洲へ赴くも、召集令状が舞い込む。

  正介が軍隊を知る筈がなかった。今日の午前一時に入隊したばかりで、まだ身体検査もすんでいないのだ。軍靴一足、軍帽一個、まだくれていないのだ。どうせ敵の戦車の下敷きにするのだから、そんなものはやっても無駄だというのか。大神様よ、かりそめにもせよ、        年齢が親と子ほども違う、天皇陛下と同年配の木川正介を殴打しようとした⋯見習士官に✖あれ⋯