八幡信仰の由緒

八幡神神仏習合』逵 日出典
 自分の生活圏の中に八幡神宮がないのは珍しいのではあるまいか。旅をして、他所にも八幡さんがあったのかと不思議に思うことがある。それもそのはず、全国で約四万社あるというのだから当然である。
 本書は、一般の読者にできるだけ理解しやすいように書かれているので、ありがたい。
 八幡神は当初より神仏習合の神として成立した。まずは神仏習合の一般的動向が述べられている。伝来の仏教が日本に流布・浸透していくには神祇信仰に接近・習合していく方がよかったのである。神宮寺の出現をもって、神仏習合現象は地方豊前国宇佐から始まり、中央にも伝わった。八幡神八幡大神八幡大菩薩へと成立・発展し、その宮も八幡宮八幡神宮・八幡大菩薩へし変遷した。
 その本家本元は宇佐八幡宮である。この地だけに八幡大菩薩の広大なふるさとが広がるのである。この地独特の文化と遺産が各章に述べられている。
 ふるさとの山河は、ときに優しく、ときに厳しく、八幡なる仏神に注がれ、この仏神を育んでいった様を、訪れた人に語りかけてくれる。