「あのね~沓音天神とかいう所に沓と字があったでしょう」
「そう、あったね、それがどうしたの?」
「夜ね、コツコツと音がして、復員して息子が帰ってくるかもしれんから、戸を少し開けて寝るんだという話⋯」
「そう、よく覚えてくれていたね。僕のお婆ちゃんのこと⋯」
「それと、宗鑑が菅公さんに腕を借りて字が上手になった話、ごっちゃになっていたかもしれないね」
「でも、うれしいな。どちらも覚えてくれていて、嬉しいな」
「別の話だったのか」
「それでも、二つの話がいっしょになって、あなたの中で奇しき物語になったね」
他愛もない昔師弟の小春日の小話でありました。