菅原道真の讃岐守時代

大宰府に左遷される前に道真は讃岐の国守になっている。「最歎孤行海上沙」と讃岐赴任の送別の宴を漢詩に詠んで嘆いている。

心ならずも妻子を都に残した単身赴任であった。今日頭を低れて昔日を思い、紫宸殿下で恩盃を賜ったことをと、落涙する。この左遷に不満を持っていた道真も、貧寒の讃岐に憐憫の情を詠んでいる。「陸地に生産はなく、孤舟に独りを老いていく」とも詠んでいる。讃岐の民情を把握し、弱者の立場で国政を行おうとしている。都への思いを抱きながらも、讃岐の風光を賞でようとしている。讃岐での職務に精励していても、道真は不遇を感じていたのではなかろうか。(滝川幸司著『菅原道真中公新書