人麻呂の意識

 
 一首一首の歌の註釈より、もっと大切なことに著者は気づく。「人麻呂における詩の誕生」と題する論考において、「詩人としての彼の偉大さは、長歌ではなく、短歌的抒情を完成したことにある。短歌において、彼は詩の自覚に到達したのであり、ここに意識的詩人が誕生したのである」と独自のシャープな新見解を披瀝した。後代の芭蕉に通じる「詩の自覚の歴史」をたどることが著者のライフワークであり、キーワードでもあった。