幻の島(10首歌)

半世紀越えた昔の物語どの花びらも海に散りゆき

島バスの岬回れば又岬キャンバスかかえ美の使徒であり

連翹の花枝撓む島裏にひそやかな恋散り過ぎにけり

美しき渚に囲まれ瀬戸内のオリーブの島青春の島

依怙贔屓をしたとは思わねど心の傾斜ありしか若き至らぬ若き日

ひたすらの慕情に応えることできず広くて薄き汎愛で終わる

盲目の崇拝をする島人のさがありうしろめたき師であり

一人ひとり名前と顔は若き日のそのままにして今いかならん

血統というのも辛し負荷背負い生きねばならぬ子に何もできず

友達に弾き出されし子がありて救ってやれなかった悔い今もあり