万葉集関連

『万葉集』 ~鴨の羽交ひに霜降りて~

葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ(巻1ー64)

我が「秋の七草」

万葉「秋の七草」 秋の野に咲きたる花を 指 ( ) 折りかき 数 ( ) ふれば 七種 ( ) の花 山上憶良 (巻8一1537) 萩の花 尾花葛花 ( ) なでしこの花をみなへしまた藤 袴 ( ) 朝顔 ( ) の 花 山上憶良 (巻8ー1538)

今盛りなり藤袴の花

我が苑の藤袴いま盛りなり あなたの来るを待つにあらねど 雅舟 『万葉集』 藤袴を詠んだ歌 ... 開花時に乾燥させたものを「蘭草」と言い、 糖尿病に効くといわれる。 山上憶良の秋の七種の歌だけに詠われる。また、『源氏物語』の第三十帖にこの花「藤袴」が…

負けてなるものか、後追い心中

『万葉集』 菟原処女(うないおとめ)が自殺。血沼壮士(ちぬおとこ)が後追い心中。菟原壮士(うないおとこ)も負けてはならじと更に後追い心中。現代では考えられない、[男→女←男]の執念・純情とは、恐るべきものなり。 菟原処女の墓を見る歌一首 高橋連虫麿 葦…

明日の万葉講座はこれ

万葉の挽歌~阪神の後追い心中~ 神戸の美少女に、千沼壮士(大阪の青年)と菟原壮士(地元の青年)が恋焦がれて強烈にプロポーズする。娘はどちらも立派な青年で1人を選ぶことが出来ず、挙句の果てに入水自殺。これを知った大阪の青年が、後を追って命を絶…

東の野にかぎろひの…

万葉の名歌を体験 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ 柿本人麻呂 (巻1ー48) (撮影) 平成23年10月12日 早暁

准看授業は、娘の自殺 『万葉集』挽歌

テキスト 菟原処女(うないおとめ) が二人の男に愛されて、男たちを仲よくさせるために(?) 姿を消した 娘の自殺… 『万葉集』挽歌を取り扱う。 〔求婚説話〕 として「菟原処女伝説」 (その他に「真間手児 奈伝説」、「桜児伝説」 等があるが、今回は触れない)…

万葉の花を描く

彼岸花は万葉の花【いちし】

道の辺の 【いちし】の花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は (巻11-2480) ★彼岸花説が有力

万葉の花「屎蔓」

高宮王の 数種 ( くさぐさ ) の物を詠める歌 皀莢(さうけふ)に延ひおほとれる※屎葛 ( くそかづら ) 絶ゆることなく宮仕へせむ (巻16ー 3855) ※【へクソカズラ】 … 昨日今日野辺に花盛り

秋の七草「朝顔」はキキョウのこと

万葉集の朝顔は、現在のキキョウのことと思われる。 朝杲 朝露負 咲雖云 暮陰社 咲益家礼 (巻10ー2104) 朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど 夕影にこそ 咲きまさりけれ 夕方の方が生きいきと咲くと言うのだから、 今しがた我が庭の桔梗の花も 生きいきと鮮やか…

萩の花は万葉の女王

『万葉集』4516首中、萩の花は142首に詠まれ、集中一番多い。 2125: 春日野の萩し散りなば朝東風の風にたぐひてここに散り来ね 2126: 秋萩は雁に逢はじと言へればか声を聞きては花に散りぬる 2127: 秋さらば妹に見せむと植ゑし萩露霜負ひて散りにけるかも 21…

万葉集には、嫁菜(うはぎ)、この二首

「うはぎ」…『万葉集』では、次の2首に詠まれている。 ★妻もあらば摘みて 食(た) げまし狭岑の山 野の上(へ)のうはぎ過ぎにけらずや (巻2ー221) 春日野に煙立つ見ゆ少女(をとめ)らし 春野のうはぎ採(つ)みて煮らしも (巻10ー1879) ★香川県坂出市の今は陸続…

万葉植物 シキビ

『万葉集』には、シキミの歌、この一首だけ 奥山の 樒が花の 名のごとや しくしく君に 戀ひわたりなむ (巻20-4476) 大原今城

万葉の花  月草(露草)

現在ツユクサという花は『万葉集』では「月草」として9首詠まれている。 月草で染めた着物は、水で色が落ち易いことから、心変わりをたとえたり、この世 のはかない命を表すのに、詠み込まれている歌もある。 月草のうつろひやすく思へかも我が思ふ人の言…

万葉の花 合歓の歌

『万葉集』では、合歓(木)(ねぶ)として、次の3首 が載せられている。 昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓の花 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ (巻8ー1461) 紀郎女 我妹子が 形見の合歓木は 花のみに 咲きてけだしく 実にならじかも (巻8ー1463) 大伴家持 我妹…

万葉「朝顔」キキョウの歌

『万葉集』秋の七草、その中の「朝顔」=桔梗 朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけれ (巻10ー2104) 作者未詳 朝顔は朝露に濡れて咲くというが、夕方の光の中でこそ、いっそう美しく咲くなあ。 当時「朝顔」は、キキョウであったらしい。 今…

これぞ万葉の花の中の花【思ひ草】

道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ 道の辺の尾花が下の思ひ草 今さらさらに何をか思はむ 『万葉集』巻10ー2270 「思ひ草」とはナンバンギセルのことです。

家持の叔母

『坂上郎女 人と作品』中西進編 (大伴)坂上郎女は万葉女流歌人で最も多く84首の歌が載せられている。1位・大伴家、2位・柿本人麿に次いで3位である。その数にもかかわらず、知名度は低い。著者は万葉の歌は女歌から始まり、女歌に終わるという考えを…

万葉歌に隠された意味

『本当は怖ろしい万葉集』小林 惠子 『万葉集』編纂者が密かに語ろうとしている政治裏面史を解明しようとするのが、本書の意図するところである。「短歌に、多くの歴史的事実と、無数の人々の哀歓がこめられている」と言う梅原猛の意見と一致するところでも…

水辺の歌人

『水辺の万葉集』 大伴家持に最も力を入れているのは、知る人ぞ知る越中高岡市。その万葉歴史館が平成10年からテーマ毎にかなり専門的な論考を刊行している。その初回のもの。 「水辺」をテーマに、新たな視点から海浜、湖沼池などに関わる万葉歌を取り上…

天皇の始源と女性歌人

『額田王の謎』梅田恵美子 額田王が「あかねさす紫野行き標野行き…」と歌ったのに対して大海人皇子が「紫草のにほへる妹を憎くあらば…」と返した万葉の名歌、絶唱。万葉に惹かれる始まりは、この相聞歌からと言う人が多いと言う。ところが、この歌は雑歌に入…

聖徳太子は痴愚だった?

『逆説の日本史2 古代怨霊編』井沢元彦 「日本の歴史は怨霊の歴史」と言わしめているものは何か。著者の持論としている日本歴史学の欠陥「呪術的〈宗教的〉側面の無視」である。たとえば、7世紀に実在した厩戸皇子が理想化された「聖徳太子」に発展してい…

初めての朗唱夜会で

『万葉の旅』犬養孝 犬養孝先生は、忘れもしない平成10年10月3日91歳で亡くなられた。時あたかも富山県高岡市で万葉集全巻朗読の初日だった。夜の会で中西進先生によって訃報が参加者に知らされ、はるかに黙祷を捧げたことを思い出す。第1巻冒頭の数…

万葉花の世界

『万葉びとが愛した名歌に咲く花』大貫茂 万葉びとに最も愛された花を五種挙げれば、萩142首、梅119首、橘69首、桜46首、紅(くれなゐ)29首。巻頭を飾るのは、立松和平のさらりとしたエッセイ「紫草と万葉集」で最も人気の額田王・大海人皇子の…

憶良の悲しみ

『悲しみは憶良に聞け』中西進 「貧乏」をうたった、ただひとりの万葉歌人憶良。「貧窮問答の歌」など貧困・病苦・老い・をテーマにした社会派詩人。そこで歌われた悲しみは、現代に通じるものがあることは、一般人にも先刻承知の事柄ではある。ただ著者はこ…

(玉藻よし)讃岐の歌は人麻呂に尽きる

大岡信監修『日本文学地名大辞典 詩歌編』による 多田一臣訳注『万葉集全解』による 讃岐国 狭岑島 ( さみねのしま ) にて 石中 ( いそへ ) の 死人 ( しにひと ) を視て、柿本朝臣人麿がよめる歌一首、また短歌 0220 玉藻よし 讃岐の国は 国柄 ( くにから )…

東歌の富士山

富士山の南東十里木辺り 『万葉集』 巻14 東歌(相聞) 3355 天の原 富士の柴山 木の 暗の 時ゆつりなば 逢はずかもあらむ 3356 富士の 嶺のいや遠長き 山道をも 妹がりとへば 気に吟ばず来ぬ 3357 霞居る 富士の山びに 我が来なば いづち向きてか 妹が歎かむ…

万葉の花、世界の「かたかご(カタクリ)」

もののふの 八十娘子らが 汲みまがふ 寺井の上の かたかごの花 大伴家持 『万葉集』巻19ー4143 鎌倉時代の仙覚が「堅香子(かたかご)」の読みを提唱。その後、カタクリに比定するのが通説となっている。うつむきかげんにひっそりと咲く可憐な花。『万葉集』…

朝日新聞の誤字?

「有馬皇子」ではなく 「有間皇子」のはず。 「有間」皇子は孝徳天皇と阿倍内麻呂の娘、小足媛との間に 生まれた。 小足媛と「有馬」温泉滞在中に 生まれたのが名の由来。ただ、現在は「有間皇子」に統一されて表記されている。