2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧
『虚子百句』稲畑汀子 人口に膾炙された虚子の名句中の名句を抜き出すと 遠山に日の当りたる枯野かな(明治33年、26歳) 桐一葉日当りながら落ちにけり(明治39年、32歳) 金亀子(こがねむし)擲つ闇の深さかな(明治41年、34歳) 春風や闘志い…
『カメラの前のモノローグ 埴谷雄高・猪熊弦一郎・武満徹』マリオ・A こういう貴重なインタビュー記録があったのかと驚かされる。もの言わぬ、言いたがらない前衛作家、真の(?)アーチストたちである。エポックメーキングの3人の芸術家の本音のところをち…
『鷗外の歴史小説』尾形仂 七作品の考察がなされているが、「大塩平八郎」だけにしぼってみよう。 鴎外が歴史小説「大塩平八郎」を書く資料にしたものに幸田成友著「大塩平八郎」がある。これは綿密詳細な歴史叙述になっている。鴎外はその記述順序を組み替…
『生きて死ぬ智慧』柳澤桂子 少し古い言葉かもしれませんが「逆転の発想」という印象を強く持ちました。 「初めに般若心経ありき」ではないのです。黒地に白字のネガ的活字で、「天の声」「宇宙の声」が浮き彫りにされているのです。世の常の漢字版に現代語…
『星と半月の海』川端裕人 清冽で、シンプルな文章の、テンポのよさに引き込まれる。 表題作は、ジンベエザメを飼育・観察する女性獣医を主人公としている。「星」と「半月」が二頭に名付けたニックネームであることが途中で分かる。「わたし(リョウコ)」…
『21世紀 仏教への旅 インド編上』五木寛之 ブッダはダイナミックな歩く人、旅する人。生涯の大半を精力的に人々に語り続けた伝道者。インド仏教の資源の姿。インドではなぜ仏教は滅んだのか。ヒンドゥーの国。さまざまな不思議発見のレポート。 ブッダが…
『21世紀 仏教への旅 インド編下』五木寛之 一冊の文庫本を携えて、なおも旅を続けている。中村元訳「ブッダ最後の旅ー大パリニッパーナ経」(岩波文庫)である。 さあ、修行僧たちよ。お前たちに告げよう、「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠るこ…
『大河の一滴』五木寛之 文豪漱石の最後に到達した人生観は「則天去私」であった。平成の国民作家、人生の求道者・五木寛之は、「人はみな大河の一滴」であるという。この名文句が彼の人生観を象徴している。これが本書のタイトルになり、人口に膾炙されると…
『蓮如』五木寛之 父は本願寺第7世・存知、蓮如はその庶子。本戯曲は蓮如39歳から始まり、本願寺8代目法主になり、波瀾に富んだ中年を経て56歳の春までが描かれている。生涯に4人の妻と死別し、5人の妻を娶る。子は男13人、女14人生まれても早世…
『正しく時代に遅れるために』有栖川有栖 タイトルのもつ効果を考えると、本書は意表を衝いたおもしろさがあり、ちょっと読んでみようかという気にさせられる。 まず、巻頭に挙げた「六段階の距離」の紹介…すべての人間は〈六段階の距離〉でつながっている。…
不二ひとつ埋みのこしてわかば哉 蕪村 富士山は『万葉集』で「不尽」、蕪村はこの句で「不二」と表記している。
6月8日 誕生日の全国35万人の皆さん、おめでとうございます (拙句) 野ばらとはわらべ心に返る花 雅舟 6月8日 【花】 ノイバラ(バラ科) 【花言葉】 素朴なかわいらしさ 【短歌】 身を守るあおい棘もち野茨の素朴に白き花かたまりぬ 鳥海昭子 ノイ…
『空を引き寄せる石』蜂飼耳 「厄を割る石」なるものが、久しぶりに参った神社で、変貌を遂げていたのである。これまでは普通の庭石にすぎなかったのが、「ありがたい石」に格上げされていたらしい。素焼きの盃を取り、石に叩きつけて割る。呪いの厄割りであ…
『これがほんまの四国遍路』大野正義 本書の特長を次の4項目にしぼって、紹介しておきたい。 (1)眞念の功績を重視していること その著「四國邊路道指南」貞享4年(1687)刊行。宿泊所情報の懇切丁寧ぶりが図示されている。札所の固定化、普及に最大…
『日本百名橋』松村博 多くの人の投票があれば、百選に少しは蓋然性が得られるかもしれにいが、本書は一個人の選んだ「百名橋」である。しかし、著者はこの道一途に過ごした専門家なので、妥当な選び方をしていると思いたい。「まえがき」で「一県から少なく…
『風化する女』木村紅美 自殺した職場の先輩「れい子さん」を語る「私」の回想録(比喩的に言えば、挽歌)で、三十歳前の女性にしては心の襞の深さ、豊かさで好感の持てる小説である。 その先輩は一般事務職のままで二十年ずっとその会社に勤め、無断欠勤を…
『樋口一葉と十三人の男たち』木谷喜美枝 2004年、五千円札の「顔」に登場した頃の本書。タイトルで注目させようとして、この純情一途な閨秀作家・薄命の天才作家に不似合いの表題をつけたものだ。 この度初めて本書をひもとく機に恵まれ、短い生涯にめ…
『俳諧のこころ』岩倉さやか 支考は蕉門きっての論客である。 俳諧の理念を初めて体系的に構築した人。「虚実の基本的な構造」「虚の顕現と時宜の問題」「人和ー俳諧と人の道」等を掘り下げるのが支考俳論の要諦である。 キーワード基本概念は【虚実】【時宜…
『藤原道長』山中裕 私は藤原道長にはあまり触手を惹かれない。ただ、中古文学には欠かせない。 道長の人間性・人柄が次のようにまとめられている。 「道長は決してあせらず、強硬なこともせず、人の気持ちを十分に考慮に入れながら事を運んでいく。ここに平…
『一葉の恋』田辺聖子 さすがは女心の微妙さが描ける女流作家だ。文学研究家がたどる作品の論証には留まらないで、中井桃水へのほのかな恋心を憶測して、その深奥を活写している。 犀利な夏子は、それを察していた。彼女は桃水への恋心が、この世では果たせ…
『宗祇』奥田勲 『新撰筑波集』の著者として、連歌を「中世詩」の最高域まで高めた室町時代の連歌師。宗祇の生涯、宗祇をめぐる人々、宗祇の遺したもの、宗祇伝説にまで及ぶ宗祇伝である。 本格的に連歌に志したのは30歳(1450年)と言われている。連…
新潮日本古典集成『芭蕉文集』 芭蕉の代表作品は全て網羅されている。制作の年月順に『野ざらし紀行』『鹿島詣』『笈の小文』『更科紀行』『おくのほそ道』『幻住庵の記』『嵯峨日記』などである。 本書の類書と違うところは、書簡・遺書の掲載されているこ…
『俳文学大辞典』 連歌から現代俳句まで総称すれば「俳文学」その辞典であるのがいい。「俳諧辞典」ならば、古典的であり、「俳句辞典」ならば、近現代的なものになるからである。 「宗鑑」も約1ページ、しっかりと入っているし、永田耕衣も半ページ割いて…
『俳聖芭蕉と俳魔支考』堀切実 芭蕉が俳聖と呼ばれるのは一般的であろうが、芭蕉を広めた支考を俳魔と呼ばれることには違和感を覚えるのではなかろうか。ただ、この「魔」は悪い意味ではなく、驚嘆するような魔力の意味であるとするならば、納得されるかもし…
自分に関係のない同窓会も、ふとのぞいてみるのも一興ですね。 みな同じように年を寄せて、追い抜きも追い越しもせず、なんと愉快なことでしょう。
刈り取られ団地に消えし捩花 捩花の先より飛べる天道虫 地蔵尊囲みて伸びる捩花 『万葉集』で「ねつこ草」と呼ばれるものは、翁草・捩花等がある。 芝付の 御宇良崎なる ねつこ草 相見ずあらば 我れ恋ひめやも (巻14-3508)
いわゆる露草ではなく、常磐露草(外来種・白花)が盛りです。 早苗塚 常磐露草 星座なす 雅舟 隠れ家や 常磐露草 星座なす 雅舟 ★常磐露草…ツユクサ科のノハカタカラクサ
6月7日 誕生日の全国35万人の皆さん、おめでとうございます (拙句) 忠実に君を待ちいる岩鏡 雅舟 6月7日 【花】 イワカガミ(イワウメ科) 【花言葉】 忠実 【短歌】 雪渓の解けゆく際の岩鏡いのちの限りねんごろに咲く 鳥海昭子 遅い春を迎えた春の…
二百九十一 献句 杖曳て像拝まばや宗鑑忌 其石
二百九十 掃きいだす春の埃や深庵 梅・